キキョウソウは華やかさが人目をひくキキョウの花を、そのまま小さくしたような可憐な花を咲かせることからこの名が付きました。キキョウほどの派手な自己主張がなく、道端で遠慮がちに小さな花をつけるその姿は、私が好きな花のひとつです。

花は画面手前ギリギリに、しかも下から見上げるような角度で描いています。
空の高さと広さ、画面にどこまでも続いているような奥行きを持たせるための工夫です。

キキョウソウを選んだのは、この花が普通に見られる野草（帰化植物だそうです）であること、そして花の紫色が夜空の雰囲気と親和性があってとても溶け込みやすいと感じたからです。
特別ではない普通の一日がその幕を下ろしつつある時間帯、まだ太陽の明るさがわずかに残るマジックアワー、なんでもない日常の中のドラマチックなある瞬間、そんな風景を描きたいと思いました。

この絵を描いているとき、自分自身が癒されるような感覚に満たされていました。
この花を見てくださる人が、いつの間にか優しく穏やかな気持ちになってくれることをずっと想像していました。
花には、描き手の気持ちまでも優しく変えてくれる効果があるようです（笑）。