この2作品は、「時をめぐる」というキーワードから頭に浮かんだイメージを表現したものです。 同じ場所を通り過ぎていく季節、その場所をめぐる時間の残像のような目に見えないものを絵にしてみたらどうなるのだろうと思いました。

水路の両側の建物はかなり昔に建てられたもので、長い時間を風雪に耐えた歴史さえ感じさせます。正面に立つ老木はしだれ梅です。この場所をずっと動かず静かに全てを見つめてきた、時の流れや季節の移り変わりを知る存在です。

《時遊覧-希望-》は春の夕方から夜にかけての風景です。時を感じさせるのは、足早に去ろうとしている雲、沈みかける太陽、そして川面の光。川面に映っている小さな光の帯は、風に舞い散るしだれ梅の花びらです。日暮れの情景はなぜか懐かしく、日本人の誰もが思い出の情景として心の中に持っているような気がします。沈みゆく太陽は、希望の明日への道しるべなのかもしれません。

《時遊覧-夢-》は同じ場所の冬の朝の風景です。流れゆく時間を、空を流れる真っ白な雲、舞い降りる雪で表現しています。また白い雲と空は、まだなにも描かれていない真っ白なキャンバス、これからどんな夢でも描ける未来、繰り返される季節や過去の時間だけでなく、まだ誰も知らない未来という時間もイメージしています。