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【Life Size Gallery】 vol.2 家入一真さんが現代アートを所有する理由、天野タケルさんに惹かれた理由

2021-10-09 10:00:00

COLUMN

時間の使い方が変わって、おうちにいる時間が増えて。「暮らしを豊かにしたい」そんな気持ちが芽生えた人も増えているであろう今日この頃。花を飾るように、音楽を聴くように、アートに触れてみる。「Life Size = 等身大の」。 Life Size Galleryは、20代の辻愛沙子がさまざまな切り口で、アートと人のリアルをめぐる対談連載です。



​​​​​​​今回対談のお相手は、アートコレクターとしても知られる株式会社CAMPFIRE代表の家入一真さん。前半ではコレクションをはじめられたきっかけやアートへの思いを。後半では、家入さんが作品をご所有のアーティストの一人、天野タケルさんの個展が2021年10月14日(木)より開かれるのを前に、天野タケルさんの作品への思いや現代アートの魅力を伺いました。

描き手から、葛藤を経て、コレクターへ


ーー家入さんは起業される前、画家を目指されていたそうですね。


家入一真さん(以下、家入):

もともと油絵を学んでいて、何浪かしてでも美大や芸大に行きたいと思っていました。でも家庭の事情も重なり、起業せざるを得なくなったんです。スタートアップはスタートアップで楽しくて、最初に立ち上げた会社が上場し、経営者として順調に歩んではいました。でも、心のどこかにずっと「本来の僕はこっち側じゃない。表現者でありたい」という気持ちがありました。起業家や経営者として見られることにも違和感があり、ずっとモヤモヤしながらやってきた感じです。


辻愛沙子(以下、辻):

そのモヤモヤは、何歳くらいまであったのですか?


家入:

30代半ばくらいまでですかね。1個目の会社が上場したあと、代表を退任して様々な活動をやっていく中で、「自分はキャンバスに絵を描くことはできないけれど、社会というキャンバスに対してビジネスという手法を通して、表現をしているんだな」と思えるようになり、少し気持ちが楽になりました。かっこつけた言い方になってしまいますが、表現の媒体が違うだけであって、起業もある意味表現の一つなんだなと。


辻:

私もいまはクリエイティブディレクターとして、ディレクションの領域を担うことが増えてきたのですが、10代の頃は一人で部屋に閉じこもって絵を描いていたり、ウォールアートを描いていたりしていました。自ら手を動かす表現への欲求はいまもあり、葛藤も感じているので、冒頭からすごく胸が熱くなるお話でした。ビジネスで一山も二山も超えていらっしゃる家入さんでも、そんな思いがあったんだなと。

家入:

いまだに答えは出ないですけどね。でもだんだん歳をとって楽になってきているのというのはあります。気にならなくなってくるというか。どうでもいっかって。


辻:

救いになる言葉です……。そんな心境の変化がありつつ、いまはたくさんのアートをお持ちですよね。どんなきっかけからアートを所有されるようになったのでしょうか?


家入:

いろんな感情がある中で、それでもアートに対していまの自分にできる活動をしたいと思ったときに、国内の若い作家さんの作品を買うことにしたんです。「いいことをしたいから買う」のではなく、自分が「本当にいいと思った作品を買っていこう」と。いまでもそうですが、数千円〜2万円くらいの作品も購入します。少しずつ買いはじめたのが5年ほど前ですかね。もともと美術館やギャラリーはすごく好きで行っていたのですが、自分で購入するまでにはいたっていませんでした。この2、3年で、さらにアートを買うスピードが加速しています(笑)。

オフィスにアートを置いて、たくさんの人に見てもらう


ーーオフィスにも所有されている作品の一部が飾られていますね。ギャラリーなどでアートをご覧になるのと、身近な空間にアートがあるのとでは、どんな違いがありますか?


家入:

やはりアートを置いた瞬間に、その場の空気が変わりますよね。作品が持つ力のようなものがあると思います。オフィスに飾るアートは定期的に入れ替えているのですが、作品が変わると、もちろん雰囲気も変わりますし。


本当はもっとたくさん飾りたいですね。アートの展示はコロナ前からしているのですが、その頃は全社員が出社していましたし、社外の方との打ち合わせもたくさんありました。結構見ていただけますし、いろいろな方にアートに触れてもらえるので、オフィスに飾るのはいいなと思います。


辻:

素敵です。普段ギャラリーや美術館に行く機会のない方も、オフィスに飾られていると、アートに触れるきっかけになりますよね。私のオフィスもいつかアートをたくさん飾りたい。夢ですね。


もちろん作品によると思うのですが、購入される際は作品のどんなところに注目されるのでしょうか?


家入:

うーん、いろんなパターンがありますね。一目惚れもあれば、作家さんのお話を聞いて惚れちゃうこともあります。作品から作者の思いや人生を感じると、やはり惹かれますよね。あとは一見シンプルだったりポップだったりするんだけれど、その裏に隠された意図を感じる作品は好きですね。天野タケルさんの作品はまさにそれで。

天野タケルさんに惹かれた理由


ーー天野タケルさんのアートとの出会いはご所有の作品だったのでしょうか?


家入:

前からもちろん存じていて、作品との初対面はGINZA SIXの蔦屋書店だったかな。そのときは当然ながら売り切れていました。いつかほしいと思っていて、ようやく買えた作品なんです。

家入:

この作品は『Venus』というシリーズです。古代のヴィーナスを天野タケルさんの解釈で、日本のポップな雰囲気で表現されているのかなと思うのですが、古いテーマを少ない線と色で表現されている面白さに惹かれます。そして、僕はこの表情から現代社会を感じるんです。たとえば奈良美智さんの作品は、睨むような表情のキャラクターから、社会に対する怒りや、こちらに対して感情を訴えかけてくるような気がします。一方でこのヴィーナスからは、どこか無関心さを感じるんです。それがなんだか今の時代背景を表しているような気がするんですよね。神話やルネサンスの象徴とも言えるヴィーナスが、この現代社会でこのタッチでこの表情で描かれている。時代を超越しながら今という時代を表現されているところがとても好きです。


現代アートって、僕らがいま生きているこの時代を切り取った作品たちなんですよね。所有することによって、この時代をいつまでも保有することができる。先ほど「作者の思いや人生を感じる作品」「一見シンプルで背景が隠されている作品」が好きだと話しましたが、もう一つ「時代を象徴する作品」というのも、僕が作品に惚れる軸かもしれません。


辻:

めちゃくちゃ面白い。たとえばいまの時代だと、コロナの影響を受けざるを得ないと思います。他にもSNSが出てきたこと、日々のニュースや政治、社会の空気感などを受けて、この瞬間だからこそ生まれる作品があるわけですもんね。その瞬間を、時を経ても感じ続けられるのが、保有する魅力なのかもしれません。


私は天野タケルさんの作品を家入さんが持っていらっしゃると知ったとき「あぁ、家入さんっぽい!」と思ったんです。


家入:

それはなんだか嬉しいです。


辻:

私が思う「家入さん」と「天野タケルさんの作品」に、共通する部分を感じるんです。

家入さんご自身も、画家を目指されていたところから今の人生の変遷がすごいですよね。ご著書を読むと、さらにいろんな出来事があられて、いろんな人生を濃縮したような生き方をされていらっしゃる。表向きに表現されていない、人間味やご自身の中で整理しきれていない葛藤やシニカルさのようなものが内側に広がっている感じが、「一見シンプルで背景が隠されている作品」と重なる部分があるなと感じます。

「この時代の作品」に触れられる価値


ーー天野タケルさんの作品の中でもご所有の2点を選ばれたのは、どんな思いがあったのでしょうか?


家入:

他にも全身を描かれている作品や、スプレーで描かれている作品もありますよね。

僕はやはり『Venus』シリーズが特に好きです。​​​​​​​

左:VENUS(YELLOW), 右:VENUS(ACRYLIC SPRAY) ©️TAKERU AMANO 

家入:

天野タケルさんは大人気の作家さんなので、作品発表後すぐに売れてしまうんです。なので現実的に買える作品の中からというのはありました。

その中でもこの2点の作品をどうしても並べて飾りたかったんです。二つで一つのような、引き剥がせない感じがして。


辻:

いままさに後ろに飾られていますが、対のヴィーナスの圧がすごいですね。色合いも素敵です。



ーー今日は天野タケルさんのアトリエのお写真をお借りしてきました。


家入:

わぁ、見たいです!

辻:

蛍光ペンでラフを描いていらっしゃるように見えますね。

なかなかラフを描かれている様子は見られないのでわくわくします。


家入:

見られないですよね。へぇ……。すごいなぁ。


辻:

家入さんは作品をご覧になりながら、制作過程に思いを馳せることもあるのでしょうか?


家入:

自分が描いていたというのもあって「何を使っているんだろう」とか「どうやって描いているんだろう」というのは、気になりますね。僕はアーティストさんに聞くこともあります。お話を伺っていると、最近はPhotoshopやIllustratorである程度下書きをつくってから、油やアクリルで描かれる方も多いようです。


辻:

そうなんですね!それを伺った上で改めて天野タケルさんの作品とラフの様子を拝見すると、完成された作品はポップでグラフィカルでありながら、こうして手書きでラフを描いてらっしゃるのに驚きます。


ラフのあとはこんなふうに作品を制作されているんですね。複数の作品を同時に描かれているのでしょうか。

家入:

3作品同時に進められているように見えますね。乾かしながら描かれているのかなというのもありますが、天野タケルさんは筆が早いというか、作品数が多い印象があります。


この壁や床にこれまでの色の重なりが残っているのがいいですよね。床を切り取って飾らせていただきたい気持ちになります。


辻:

作品に注がれてこられた情熱が、折り重なっていて胸にきますね。


今日、天野タケルさんの作品についてお話いただいたり、制作過程をご覧になったうえで、改めて天野タケルさんの作品に思うことはありますか?


家入:

先ほどお話した「時代を切り取った現代アートの魅力の話」にも通ずるのですが、他の作品やこれまでの作品、制作過程を拝見すると、これから先どんな変化が待っているんだろうという楽しみもあります。シンプルな作品だからこそ、変化の余白がたくさんある気がして。この作風が数十年と続いていくのかもしれないし、変化があるとすればどんな変化なのかはわからないですが、いずれにせよ「天野タケルさんという一人のアーティストのこの時間」そして「この時代の作品」に触れられるというのは、とても価値のあることだと思います。


アートといっても近代アートをはじめ、いろんな種類があると思います。その中でも僕が現代アートを好きなのは、繰り返しになりますが、やっぱり今という時代を象徴しているからなんですよね。これまでも震災があったり、今はコロナがあったりします。いろいろな出来事があり、価値観も移り変わっていく。そんな時代をアーティストさんを通して手元に残し、飾れるというのは、現代アートを所有する大きな魅力です。​​​​​​​

今回、家入さんにお話いただいた天野タケルさんの個展「天野タケル展(ヴィーナス)」は下記の概要で開催されます。​​​​​​​


【会場】

WITH HARAJUKU HALL

【会期】

2021/10/14(木)〜2021/10/17(日)

【時間】

10:00〜19:00(初日は14:00から、最終日は18:00まで)

詳細はこちらのページをご覧ください。

https://kazaru.art/contents/164/

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